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インド市場への挑戦 part.2
ーアジアNo.1企業を支える縁の下の力持ちー

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インドの衛生用品市場で目覚ましい成長を遂げるユニ・チャーム様。その工場では、24時間体制で製品づくりが進み、1000名を超える作業員が昼夜を問わず生産ラインを支えています。しかし、インドの製造現場では、「安定操業」が極めて大きな課題となっています。

この難題に挑んだのが山九。人材に対する独自の取り組みと、日本基準の品質管理を融合させ、インドならではの問題を一つひとつ克服しています。近隣の村々と協力した採用活動、体系的な教育訓練、そして現場の声に耳を傾ける丁寧なコミュニケーション―――こうした積み重ねが、24時間止まることなくお客様が製造を続ける基盤を築き上げているのです。

第2回ではユニ・チャーム様(以下、敬称略)との事例を通じて、山九がどのように"インドのものづくり"を支えているのか、その舞台裏を追います。

【Company Profile:ユニ・チャーム】


ユニ・チャームは1961年創業の衛生用品メーカー。ベビー用紙おむつ「ムーニー」や大人向け「ライフリー」、生理用品「ソフィ」、そしてペットケア用品などを幅広く展開し、グローバルで高いシェアを誇る。
海外売上比率も高く、アジアを中心に事業を拡大中。独自の吸収・フィット技術を強みに、快適さと環境配慮を両立した製品づくりを行うほか、「NOLA & DOLA」(必要な人に必要なケアを)の企業理念のもと社会貢献にも注力している。


1. インドにおける衛生用品の普及拡大


日本では当たり前となった紙おむつや生理用品も、インドではまだ十分に普及していません。都市部でも生理用品の普及率はおよそ30%にとどまり、農村部ではさらに低い実態があります。多くの女性が十分な衛生環境を得られず、日常生活に支障をきたしているのです。


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こうした状況を変えようと、ユニ・チャームは2009年からインド市場に本格参入。赤ちゃん用紙おむつや生理用品を広めると同時に、2013年からは女子学生や農村部の女性を対象とした衛生教育にも注力しています。スリシティ、ニムラナ、アーメダバードの3つの拠点に生産施設を設けることで、いまインドの人々の暮らしをより豊かにしようとしています。そうした地道な取り組みの成果もあり、インドにおけるユニ・チャームの紙おむつシェアは2023年からTOPまで拡大しています。


2. 生産を支える人材マネジメント


山九は、ユニ・チャームのニムラナ工場とスリシティ工場において構内における物流サービスとオペレーションサポートを展開しています。スリシティ工場では約550名、ニムラナ工場では約100名の作業員が、それぞれ24時間の生産ラインを止めることなく動かし続けています。


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スリシティ工場では、受け入れた原材料の保管・在庫管理から生産ラインへの供給、さらに包装オペレーション補助に至るまで、製造工程全般を支える幅広い業務を担います。もし生産ラインが止まれば、即座に莫大な損失や計画遅延に直結します。その緊張感の中で、山九のメンバーは常に先の展開を見据えた効率的な管理を求められているのです。


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その安定操業を支えているのは山九最大の強みでもある「動員力」です。

インドのものづくりを語るうえで「人材」は欠かせません。経済成長を背景に年々上昇する人件費やストライキリスク。企業にとってはどれも看過できない課題です。

そうした中、山九は「必要な人材を確実に動員する」という強みを活かし、長期にわたりユニ・チャームの生産現場を支えています。山九自身が多くの派遣会社を一括管理し、採用・教育・シフト調整までを担うことで、現場が混乱することを防ぎ、突発的な欠員や需要変動にも柔軟に対応できる仕組みを構築。管理の煩雑さが大幅に軽減されることで、お客様は生産業務に専念できるのです。


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さらに、近隣村落との関係づくりにも注力。村の中心人物とこまめに対話を重ね、宿舎の整備など働きやすい環境を整えることで、欠勤率の改善に大きく貢献しています。季節ごとに変動する製造需要を支える"安定操業"は、こうした周辺コミュニティとの連携と細やかな人材マネジメントによって初めて実現できているのです。


3. 安全と品質への取り組み



工場現場の最優先事項は、言うまでもなく「安全」。過去の工場火災経験を糧に、山九はハードとソフト両面で徹底した安全策を展開してきました。特に教育に重点を置き、定期的な安全教育や訓練を通じて、作業員の安全意識向上に努めています。


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ルールなどは掲示板ですぐに理解できる形で掲載


工場内では日々の安全パトロールは勿論のこと、特に火災対策については、初期消火活動の重要性の共有や、定期的な訓練を通じて、"万一の時に慌てない"対応力強化を図っています。


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品質管理面でも、日本で培われた厳格なノウハウをインドの現地仕様に合わせて落とし込んでいます。標準作業手順や品質チェック体制を整備し、"当たり前"をどこまで当たり前に実行できるかを追求。その取り組みの要となるのは、日本の課長クラスに相当するインド人のアシスタントマネージャーの存在です。彼らが現場を統率し、年4回以上の個人面談などを通じてメンバーのスキルやモチベーションを引き上げる―――こうした地道な努力こそが、安定操業を最前線で支えているのです。

『山九なくして、工場運営はできない』
Unicharm India Director 松本様インタビュー

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・安定操業を支える確かな実行力


山九さんは私たちの工場で1000名規模の人員を管理し、24時間体制で動かしてくれています。当たり前のことを当たり前にやる―――それが実はインドではとても難しい。休み明けには欠勤率に苦しむこともありますが、山九さんは各派遣会社との連携によって生産へのダメージを最小限に抑えてくれています。

インドでは季節による需要変動が非常に大きいのが特徴です。冬場は寒さから紙おむつの需要が高まりますが、夏場になると暑さのため使用頻度が下がります。夏は「暑いから昼間は裸でもいいか」と感じられ、オムツの使用量が減るのです。この季節変動に対応する生産調整が必要になりますが、そこで立ちはだかるのがやはり人材確保の問題です。冬の繁忙期には、他の企業も同様に人材を必要とするため、工場周辺地域での人材の取り合いになります。欠勤率が高いインドでは、必要な人材を確実に確保することが極めて重要です。

私たちは安全を最優先に掲げていますが、山九さんも同じ価値観で動いてくれています。日本レベルの安全基準をインドの地でも実践し、生産工程のロスを徹底的に減らし、品質管理も妥協しない。それが私たちの生産性アップに大いに貢献してくれています。


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・不可欠なパートナーとしての存在



現場からは「山九なくして工場運営はできない」という声が上がっています。これは工場を管理している複数人の言葉ですが、私も全く同感です。単なる協力会社ではなく、私たちと同じ目線で課題を見つけ、解決に取り組んでくれる。そんなパートナーとしての価値を、私たちは高く評価しています。

2025年1月から稼働している第3工場でも、工場構内の資材管理から製造エリアまで、さらに協力をお願いしているところです。私たちが山九を高く評価しているのは、品質とコストのバランスを保ちながら、安全管理や人材育成にも力を入れてくれるところです。教育訓練が行き届いた現場運営と、課題解決に向けた真摯な姿勢。そういった総合的な取り組みが、私たちの工場運営に不可欠なパートナーとなっている理由です。